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よくある質問
Q1:読書をすれば読解力がつくのですか?
●Q2:新聞を読めば読解力がつくのですか?

●A: ただ本や新聞を読んでも効果はありません。書いてある内容がすぐには飲み込めないレベルの文章を選び、その内容を隅から隅まで把握できるまで徹底的に読み込まなければなりません。そのような方法・態度での読書をすれば読解力がつきます。

まず、読解力とは言語を道具とする思考力です。思考力とは論理力です。論理とは判断と推理のことですが、判断と推理を積み重ねて、「あることについてつじつまの合う理解や説明ができる」ということが、論理力であり思考力です。したがって、読解力とは、ある文章の内容についてつじつまの合う理解や説明ができるということです。

難しい文章についてつじつまの合う理解や説明に到達するためには、あれこれと考え、行ったりきたりしながら、何度も繰り返し読むという作業が必要になります。これをしているうちに、あるときその文章の言いたいことが、つじつまの合う形で自分の頭の中にイメージできるようになります。これは感覚的には文章が透明になったように感じられる瞬間ですが、まさに「読書百篇意自ら通ず」というわけです。

ここでおもしろいことに気づいてください。思考作業は「試行錯誤」の作業であるのです。あれこれ試行錯誤を経て、つじつまの合う説明に到着する。したがって、思考力をつけるためには試行錯誤をしなければならないのです。

そこで、読解力をつけようと思ったら、自分にとってむずかしいと感じられるレベルの文章を選ぶことが必要です。次に、その文章の述べたいことが、つじつまの合う説明として把握できるまで、あれこれ試行錯誤を重ねながら読み込まなければなりません。このような作業をいくつもの文章について積み重ねていくうちに、次第に高度の読解力を獲得することができるのです。

私は、入試問題で充分な点数が取れないレベルの皆さんが、読解力をつけるためには、いわゆる「読書」は効果が少ないか、まったくないか、あるいは、有害であるとさえ思っています。それよりもむしろ入試問題集を一冊買ってきて、その文章を徹底的に読み込むほうが効果的に読解力をつけることができると思います。読書はそうして読解力をつけた後にすればよいのであり、読解力がないのに、「本を読めばよい」などという無責任なアドヴァイスを信じて、結局、読解力をつけずに終わる、ということのないようにしてほしいと思います。

ついでに言えば、たとえば「ハリー・ポッター」を何冊読んでも、ほとんど効果はありません。具体的な事実が連続的に記述されているだけですから、その内容は漫画や映画のように容易にイメージできます。これは読解力、したがって、思考力の本質である論理のトレーニングにはならないからです。

また、「天声人語」を読めば読解力がつく、というのも間違いです。読解の基礎力をつけるにはもっと構成の明確な、内容のはっきりした論説文を選んで、練習台にすべきです。「天声人語」は随筆的な性質を多分に持つ点と含蓄や示唆に富む点で、論理力の練習台としては不向きです。

 私は、これらの作品を否定しているわけでも、読むなといっているわけでもありません。読解力を「つける」ための練習台としては適切ではないと言っているに過ぎません。


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